ちぢれっ毛よ,永久に…

浴室の天井にちぢれっ毛が張り付いていることに気付いたのは,今年の4月に引っ越してきて約1か月経過したころでした。
そのちぢれっ毛は長すぎず,短すぎず,太すぎず,細すぎず,どの部位の毛だとしても不思議ではない様相のありふれたちぢれっ毛でした。
はじめは「なぜ天井に!?」と思ったものの,今にも天井から落ちてきそうな頼りなげな佇まいだったため,それ以上深く考えず,あえて手を伸ばして引っぺがすことはせずに,時間と重力に任せよう,人為的な手を加えるのは止め,あるがままの状態にしておこうと思い,放置することにしました。


それから月日が流れて約半年,11月10日現在,未だにちぢれっ毛は頼りなげな佇まいのまま浴室の天井にしぶとく張り付いています。
流石にここまで張り付き続けるとは思っていなかったため,そろそろこのちぢれっ毛と真剣に向き合うべき時が来たのだろうと思い,このブログで取り上げることにしました。

  • なぜ,天井にちぢれっ毛が張り付いているのだろうか!?

まずは,根本的な疑問から検証する必要がありますが,風呂やシャワーを使っている最中に,自然にちぢれっ毛が天井に張り付く現象は聞いたことがありません。
だとすると,私が浴室にいない間に,何らかの力が作用して,浴室の床に落ちていたちぢれっ毛が天井に張り付いたと考えるべきなのでしょうが,何らかの力とは一体何なのかが問題になってきます。
突如浴室に突風が吹き荒れ舞い上がったちぢれっ毛が天井に…?
いや,流石に浴室に突風が吹き荒れることはないので,この可能性は低そうです。
突如浴室が無重力状態になり,舞い上がったちぢれっ毛が天井に…?
いや流石に浴室が無重力状態になることはないので,この可能性は低そうです。

まてよ…私は何か重大なことを見落としているのではないですか。
見た目の佇まいから,ちぢれっ毛らしき物体を「ちぢれっ毛」と認識していましたが,果たしてこれは本当にちぢれっ毛と断言して良いのでしょうか。
そもそも,ちぢれっ毛らしき物体がちぢれっ毛に間違いないかどうかを検証する必要があるのではないでしょうか。

  • このちぢれっ毛らしき物体はちぢれっ毛に間違いないのだろうか!?

ちぢれっ毛型盗聴器が天井に…?
科学の進歩が作り出した最新のちぢれっ毛型盗聴器を我が家の浴室に何者かが設置したというのはどうでしょう。
しかし,浴室に設置しても,お湯の流れる音と私の歌声しか盗聴できず,あまりメリットはないと思われるので,この可能性は低そうです。

ちぢれっ毛型UFOが天井に…?
ちぢれっ毛星からやってきたちぢれっ毛星人がちぢれっ毛型UFOに乗り込んで地球人のちぢれっ毛を観察に来たというのはどうでしょう。
しかし,浴室の天井から観察した場合,見えづらい箇所のちぢれっ毛が多数あるため,この可能性は低そうです。

ちぢれっ毛型お札が天井に…?
この文章を書いている最中に気付いたのですが,このちぢれっ毛らしき物体は,いつから天井に張り付いていたのか,という疑問が湧いてきました。
私が存在に気付いたのは今年の5月前後ですが,もしかすると,私の入居以前から張り付いていたという可能性はないでしょうか(浴室ではメガネを外しているため,ちぢれっ毛を見過ごしていた可能性があるのです。)。
たとえば,私の住んでいる建物は2年前くらいに完成したそうなのですが,完成直後に近くを通りかかった呪術師が,
「何ということじゃ,この土地は呪われておる。このままでは,いずれ入居者に厄災が降りかかるであろう。しかし,こんなときに便利なのが,これ,ちぢれっ毛型お札。このちぢれっ毛は,私の身体のどこかしらのちぢれっ毛を抜き取って,私の特殊な超魔除けパワーを注入しているのです。これを水気のあるところに張り付ければ,たちまち金運,健康運,恋愛運,仕事運が急上昇。今ならもう一本お付けして,セットで2万円,2万円でお買い求めいただけます。」
と言葉巧みに入居者に購入させた胡散臭くもありがたいご利益のあるちぢれっ毛型お札が,その後に入居した私に引き継がれているというのはどうでしょう。


ううむ,消去法で考えると,このままでは,ちぢれっ毛型お札説が有力な説になってしまうのですが,そうすると今度はちぢれっ毛が剥がれ落ちないかどうかを気にして日々過ごさなくてはならないのでそれはそれで困ってしまいます。
なぜならちぢれっ毛が剥がれ落ちると,入居者に厄災が降りかかるのだから。
さあ大変です。
このままでは,常にちぢれっ毛の動向を探る日々の中,心身ともに疲れ切った私は,風邪をこじらせて寝込んだ際に「ああ,あのちぢれっ毛が落ちてしまったら自分は死んでしまうのね」と最後の一葉的なネガティブな気持ちになってしまうに違いありません。
厄災を防ぐためのちぢれっ毛型お札に苦しめられるとはなんという皮肉な展開でしょう。こんな理不尽なことがまかり通って良いのでしょうか。

慌てふためいた私は,呪術師を探しても行方が分からないため,仕方なく退去するまでの3年間,雨の日も風の日も雪の日も必死の思いでちぢれっ毛を見守り続け,私の次に入居予定の方にちぢれっ毛型お札を無事引き継ぐことになるのです。
それからというもの,ちぢれっ毛型お札は,次の次の入居者,さらに次の入居者と代々引き継がれ数十年浴室に張り付き続けたころには,その地域住民の間で地域の災厄を防ぐ守り神として崇められ,お参りに来る人が後を絶たないのだそうな。

とっぴんぱらりのぷぅ。