理想の死に様☠屈辱の死に様

1 理想の死に様
ドラゴンクエストXでは,「攻撃時○パーセントで眠り」のランプ錬金を付けた装備品で敵を攻撃すると,たまに敵が眠り状態になるのですが,当然,致死ダメージを与えると同時に眠り効果が発動することもあるわけです。
そのたびに私は,「おお,モンスターが眠るように(厳密に言うと眠りながら)死んでいるではないか」と思い,安らかな顔で倒れたモンスターの姿を想像するのです。
きっとモンスターにしてみれば,眠りつつ倒されるのは,もっとも苦しむことのない,いわば安楽死のような死に様なのでしょう。
日々何百万,何千万とモンスターが殺され続けているアストルティアの地では,あちこちにモンスターの死骸が転がり,さぞ血生臭い殺伐とした風景なのでしょうが,その中でも,眠りながらの死は最もスマートで推奨されるべきトレンドな死であり,モンスターの間では,「どうせ殺されるなら眠りの錬金効果が付いた装備品で安らかに死にたいよねー,ぷるぷる」といった会話が交わされていることでしょう。


2 屈辱の死に様
理想の死に様がある一方で,こんな死に方は嫌だよねー,とモンスターの間でうわさになっている(であろう)死に様もあるのですが,それは,「ハイテンション死」です。
モンスターの中には「テンションバーン」という,相手からダメージを受けるたびに自分のテンションが一段階上がる状態になる技があるのですが,テンションバーンを使ったモンスターに対し,致死ダメージを与えると,モンスターはテンションが上がりつつ死んでいくのです。

眠りつつ死んだモンスターであれば
「おい,見ろよ,なんとも安らかな死に顔じゃないか」
「ちょっと時間があるから,眠るように死んでいったこいつの墓でも作ってやるか」
というやりとりをするパーティーも現れるかもしれませんが,一方では,テンションが上がりつつ死んだモンスターであれば,
「おい,見ろよ,なんともユニークな死に顔じゃないか」
「ああ,目をカッと見開いて気合いのこもった表情で死んでいるから,今にも動き出しそうで気味が悪いな」
「よし,念のためとどめを刺しておこう」
「えい」
「やあ」
というやりとりをするパーティーも現れ,死んでなおめった刺しにされるということもあるのでしょう。


それだけならば,まだましなほうで,
「おい,見ろよ,なんともユニークな死に顔じゃないか」
「ああ,目をカッと見開いて気合いのこもった表情で死んでいるから,なんというか,年甲斐もなくはしゃいでいたらテンションが上がりすぎて,そのまま死んじゃいました,みたいで,なんともまぬけな死に様だよなあ」
「よし,記念に写真を撮っておこう」
「パシャリ」
「パシャリ」
というやりとりをするパーティーも現れ,ハイテンション死の写真は,冒険者の集まる酒場で酒の肴として見世物にされることもあり,たとえば,
「いやー,ハイテンション死顔の中でも,特にゴールドオークは『死んでなお,斜め45度の顔の角度を保ちつつのハイテンション顔』というのが,よりいっそうユニークさを際立たせておりすばらしいですなあ」
と言ったやりとりがなされるに違いありません。
きっと,テンションバーンを使うモンスターの間では
「いいかい,テンションバーンを使うときは,後悔することのないように,相手パーティーの力量とタイミングをよく見計らった上で使うんだよ。でないと,冒険者の間で恥ずかしい写真が出回って我々一族の末代までの恥になってしまうからね!」
といった教えが親から子へと広まっていることなのでしょうなあ。