1ドルフレンド

中学の時のことである。
友人に100円を貸したところ,いつまで待っても返して貰えなかったので
催促すると,
「ごめん,今,持ち合わせがないから,代わりにドルで支払うよ」
と言って,その友人は1ドル紙幣を手渡してきたのだ。


「あ,そう。わかった。」
とその時は言ったものの,冷静に考えるとなぜ彼が1ドル紙幣を持ち歩いていたのか・・・
なぜ,100円を用意せずにあえて1ドル紙幣で返そうと思ったのか・・・
なぜ,私はなんの疑問も持たずに1ドル紙幣を受け取ったのか・・・
時が経つにつれて,そのような疑問がわき上がってきた。


当時の記憶が薄れていくのに反して,疑問が色濃くなっていくからだろう。
結局のところ,私は未だにその1ドル紙幣を捨てることも,使うことも,
円に換金することもなく,薄汚れたままさいふに大切にしまっているのである。