ヒゲ山のうっかり相談室

ヒゲ:皆さん今晩は。ヒゲ山のうっかり相談室の時間です。ぼよよーん。
  今日の相談者Aさんは大のカラオケ好きで、ひとりカラオケにも行ってみたいと考えているんだけど
  恥ずかしいから行けない、ということで困っているようです。そうなんですね、Aさん。


A:はい。どうしても店員の目が気になってしまうので、ひとりでカラオケ店に入るのは、抵抗があります。
 「こいつひとりで来たのかよ」みたいな目で見られるのが嫌で。


ヒゲ:ほほう。でもね、店員はそこまで考えてないだろうから気にしなきゃいいんじゃない。


A:ええ、それは分かっているのですが、どうもじっと見られてしまうと気になって。


ヒゲ:なるほど。それじゃあ入店すると同時に店員の目をつぶしたらどうかな。


A:ああ、不安の源を抹消するわけですね。


ヒゲ:そのとおり。ただし、すばやく的確に攻撃することがこれ、肝要。


A:わかりました。これからは毎日練習に励みたいと思います。
 そして自信がついてからカラオケに行くことにします。


ヒゲ:安心するのはまだ早いですよ。本当の勝負はここからじゃないですか。


A:・・・と、いうと?


ヒゲ:目つぶしをされた店員は怒るだろうから、Aさんを個室に案内した後、カラオケ機材を
  使えないように嫌がらせをするかもしれないでしょう?


A:確かにそれは否定できないですね。一体どうすればよいのでしょうか?


ヒゲ:まあ、落ち着いて。あなたに自分カラオケという技を教えます。


A:自分カラオケ!?


ヒゲ:自分カラオケとは自分の脳内でベースやギター、ドラムなどの楽器類を響かせることで、
  カラオケ機と同様の効果を生み出す技のことをいいます。
  熟練値をあげることで脳内で用いる楽器を増やすことができ、最終的にはオーケストラを
  再現させることもできるのですよ。


A:わあ、なんてすばらしいんだ自分カラオケ。
 ところで自分カラオケをあみ出したヒゲ山さんの熟練値は相当なものなんでしょうか?


ヒゲ:いや、私の熟練値は6なので脳内楽器はカスタネットだけなんだ。
自分カラオケの道はそんなに甘くはない。これ、特訓あるのみ。


A:わかりました。精進します。
 しかしカラオケ機材が使えないとなるとマイク無しで歌わないといけないんでしょうか?


ヒゲ:ふふふ、自分カラオケを極めると脳内エコーや脳内音量を調節して脳内マイクを使うことができ、
さらには脳内採点機能や脳内ミニゲームなども楽しむことができるぞ。


A:わあ、なんて万能なんだ、自分カラオケ。さっそく今日から目つぶしの練習と共に始めたいと思います。


ヒゲ:うん。その意気です。でもね、安心するのはまだ早い。
自分カラオケを用いていることを店員に知られてしまうと、さらなる嫌がらせをしてくるから、
  その対策も考えておかなければいけないよ。


A:嫌がらせ?


ヒゲ:例えば1時間で申し込んだ場合50分しか経っていないのに「終了5分前です」と連絡してくるんだ。


A:わあ、それは嫌ですね。一体どうすれば・・・。


ヒゲ:これを使いなさい。


A:こ、これは?


ヒゲ:とろけるチーズだ。マイクのさきっちょのアミアミの部分にびっしりと詰め込んできなさい。
  目には目を、嫌がらせには嫌がらせを、だ。


A:ラジャー。


ヒゲ:ひとりカラオケの道は険しい。先人たちがみんな通ってきた道なのだからAさんもがんばらなきゃいけないよ。


A:わかりました。今日はどうもありがとうございました。


ヒゲ:今日のうっかり相談室は一人カラオケで悩んでいるAさんをお招きしてお送りしました。
  では、時間になりましたので、このへんでお別れです。
  みなさんありがとうございました。
  ごきげんよう、さようなら。




その後Aさんの姿を見た者はいない。