フニャコフニャオの秋

ここ最近急激に気温が下がり涼しくなってきました。
過ごしやすさでいうと春も秋もそれほど変わらないような気がするのに、私が断然春を好きなのはどうしてでしょう。
おそらく春は冬と夏に挟まれている、というところに秘密がありそうです。
生命の活動が衰える冬から生命のあふれかえる夏へと移行していく中間点にある春は無駄に期待感を高めてくれます。
シンプルな色合いの季節である冬から彩り鮮やかな春、そして夏へと移っていくので否応なしにうきうき
させるのでしょう。
それとは反対に秋は、無駄にテンションを上げた夏から死の世界が広がる冬へと移行していく中間点にあるので
温度の減少とともに気分もだんだん落ち着いてきます。


たぶんもっと南の方に住んでいればもうちょっとましなのかもしれませんが、私が現在住んでいる地域は
それはそれは厳しい冬です。
村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」の舞台の一つである「世界の終り」の冬のごとく厳しいです。
それはもう小説の世界じゃなくっても冬の壁にきりきりと痛めつけられ、影もゆっくりと死んでいくんじゃ
ないかってくらいです。
ちなみに去年大学の後輩が遊びに来た時に北国の冬の厳しさを目のあたりにした一人が
「死の世界だ!ここは死の世界ですよ、ヒゲ山さん!うわー」
とくり返し叫び、発狂しそうになったことはあまりにも有名なエビソードとして語り継がれています。
そのことからもこちらの冬の厳しさが容易に想像できるでしょう。


ただし春の方が好きだから秋が嫌いだというわけではなく、なんというか日が暮れるのが早くなった今頃だと
仕事を終えて外に出た時に薄闇の中に秋の風のにおいを感じたりすると、おお日本には四季があるのだ、
世界が移ろうとしているのだ、生きているのだ、と強く再認識し逆に静かにうきうきしてきて酒でも
飲むかーって気になるのですよ。
それが今頃であり、季節の境目具合がちょうどいい塩梅の時期だったりするのです。