ZOO

夜9時を過ぎたころ、「そういえば昨日から乙一さん原作の『ZOO』という映画が近くの映画館で上映されている
はずだなあ」と思い出し、ネットで調べたところ9時40分から始まるようなので自転車をかっとばして
映画館に向かいました。
どうも昼間太陽が照っている間はあまり外に出る気がしないのですが、日が沈んでから元気になる私は
おそらく夜行性なのでしょう。


行ったことのない映画館だったので場所がよくわからず、地図で見ても自宅から15分以上かかりそうだったので
かなりあせりましたが、衝動的な情熱が煮えたぎっていたので、「うおー」という今年一番の気合いで
がんばりました。


その結果なんとか上映5分前に到着しましたが、中に入ると他に人がおらず貸し切り状態でした。
日曜の夜だとはいえ上映2日目だというのに、この空席具合はなんなのでしょうか。
しかし他に誰もいない空間で一人映画を見るというのは贅沢な気がして
「ほっほっほっ、こりゃあいいわい」といった優越感に浸れるので、わくわくしていました。
でも、上映2分前にじいさんが一人入ってきたので「ちっ」と思いました。
残念。



では感想


①カザリとヨーコ
ところどころストーリーで省略されていた部分はあったが、今回の5作品の中ではかなり原作に
忠実に作られていたような気がする。
ただ、原作の「わたしは、彼女のことが心から好きだった。しかしそれは十秒前までのことだった。」
という心境が変化する部分、緊張感のある見どころのシーンがあっさりしていたのが残念だった。
(人は変われるんだ!とはじめから決意していたため)
あと、最後はなんとなく、家なき子っぽいなあと思った。



②SEVEN ROOMS
個人的に一番良かった。
原作で文章で創られていた舞台が、映画でどのように映像化されるのか楽しみにしていたのだが
よくできていたと思う。
文章だとわかりづらい部分も、映像で表現されることでわかりやすくなっているんじゃないだろうか。
原作では殺人鬼の姿を見せないことで怖さをより際立たせていたけど、映画でもそれがうまく生かされていた。
ラストのトリックは原作では、ちょっと無理があるんじゃないかなあと思っていたけど、電球を壊して
視界を暗くする、という部分の理由付けが映画ではうまくできていたと思う。



③SO−far
父親のいる世界、母親のいる世界、二つの世界を映画で見るとおもしろかった。
主人公の主観から見える「不思議な世界」をうまく映像化できていたのではないだろうか。
でもあまり好きな話ではないので、原作をあまり覚えておらず、ああそういえばこんな話だったなと
思いながら見ていた。
しっかし、ひどい両親だなあ。
ラストのオチで「なぜ主人公が二つの世界を行き来して、結局一方の世界で生きることになったのか」
という説明があるのだけれど、原作の「ぼくは望んでこうなったのかもしれない」という救いの部分が映画だと
わかりづらかったような気がするので、そこはだめだった。



④陽だまりの詩
乙一全開といった感じのやわらかくてやさしいストーリーなのだが、これにアニメという表現が
うまくマッチしていたと思う。
初めは動きや表情がぎこちなく、固い絵が「どうかなー」と思ったけど、意外にもストーリーに
合っていたのだよこれが。
キャラクターデザイン・絵コンテ・脚本が古屋兎丸さんなんだけど、彼の描く女の子はかわいいのでよかった。
昔、原作をはじめて読んだ時、意外性に欠けていまいちかなーと思ったがアニメで見たら想像していた
よりもおもしろかった。
家に帰ってもう一度小説で読んでみたら、おもしろかった。
小生、反省。



⑤ZOO
一番原作を無視してやっていた。
もはや乙一さんの作ったものとは別物でないか。
元々原作をあまり好きではなかったのだけれど、その原作をいじってかなり映画的に仕上げていたので、
さらに受け入れ難かった。
五作品の中では、自分的に、これは蛇足だったんじゃないかと思う。