スーベニア

スピッツのニューアルバム『スーベニア』が発売されました。
ここ数年のスピッツを聞いていて思うことなのですが、(シングル曲に限らず)新曲を聴くたびに
進化しているなあ、と感じるのです。特にアルバム『ハヤブサ』のあたりから、いろいろなことに挑戦して、
試行錯誤している印象を強く受けます。
その結果前回のアルバム『三日月ロック』を聞いたときは、イメージを伝えるための武器を多く手に入れており、
表現の幅が広がっているなあ、と思いました。



そして、満を持して登場のスーベニアです。進化を続けるスピッツの一つの区切りとして、
かなりバランスのとれた良質なアルバムに仕上がっているのではないかと思います。
それは正宗さんが「今回のアルバムはいつもより、自分で聴いてても飽きが来ない仕上がりです」
と言っていることからもわかると思います。



では具体的にアルバムの中で印象に残った曲の感想を書いてみたいと思います。

春の歌

サビの部分がスカッとします。なんというか窓を開けたら光のシャワーが降り注いだ、みたいな爽快感。
アルバムの1曲目にふさわしい、季節は冬なのに春を感じさせる曲。
初っ端からこんな良い曲だったら、この後にはどんなすばらしい曲が収録されているんだろう、
と期待をかりたててくれる曲です。

ありふれた人生

これぞスピッツ節!と思わせる懐かしせつないメロディーです。
実は最初聞いたときは、音域も狭いし、地味目な曲だなーと思ったのですが、聞くたびにじわじわと
心身に染み入ってきて、今では自分の中でのスーベニア・マイベスト3に入る曲になりました。
それにしても、『正夢』もそうだけど、今回のアルバムは弦楽器を使う曲が多いですね。
弦楽器が加わることによって、曲にボリューム感が出ており、非常に良い塩梅に仕上がっていると思います。

甘ったれクリーチャー

かっちょえーなー。
スピッツというとどうしても「ふんわりしたせつない曲」という偏ったイメージを持っている人が多い
ようなのですが、この曲はそういう偏ったイメージを持つ人たちの価値観を180度覆します。


スピッツの魅力の一つにもちろん、「ふわふわしたやわらかなせつなさ」というのはあるのですが、
もう一つの特徴として「ぎらぎらとした鋭さ」というのがあると思うのです。
具体的には、有名なところだと『ロビンソン』のカップリング曲の『俺のすべて』だとか、
アルバム『フェイクファー』に収録されている『スーパーノヴァ』なんかは、かなりぎらぎらしてますね。
個人的にはふわふわスピッツもいいのですが、ぎらぎらスピッツも好きなのでもっとそっち方面の
シングルなんかも出してぎらぎらを前面に押し出すべきだと思っているのですが、
そうもうまくいかないですねえ。
そんなフラストレーションをを抱えたスピッツファンのための、ギラギラかっちょえー曲です。

優しくなりたいな

してやられました。何て憎らしいんでしょう。
なにが憎らしいかって、『甘ったれクリーチャー』の後にこの『優しくなりたいな』を持ってくる曲順がですよ。
先ほど2種類のスピッツについて説明しましたが、この曲はこれでもかというほどふんだんに
ふわふわ・やわらかに仕上げています。
今回のアルバムの中で、最ギラギラ曲の後に最ふわふわ曲を持ってくることによって、
よりふわふわ感が際立っているんですよ。
そして極めつけはピアノです。正宗さんの穏やかでやわらかな声がピアノとベストマッチしているのです。
「優しくなりたいな」だとー!この曲聴いた人はみんな優しくなっちゃうよ。
ほらほら、お前さんも優しくなっちゃいな、ってなもんです。
今回のアルバムの中でいいポジションにある曲の一つだと思います。

ナンプラー日和

タイトルからしてユニークなのですが曲もユニークです。注目すべきは三線を使っていることでしょう。
(たぶんスピッツ初の試み?)
踊りだしたくなるような、聞いていてうきうきしてくる沖縄風味の曲です。
私の記憶が確かならば、アルバム『色色衣』のSUGINAMI MELODYで三輪テツヤさんが
バンジョーという楽器に挑戦したときに「今度は三線に挑戦するかー?」というようなことを言っていたので
今回それが実現したのかな?と思ったのですが、よくよく見たら三輪さんが三線を引いているわけでは
ないようです。
残念。


あと、最初聞いたときなんとなくジッタリンジンの「ダーリンラムネを買〜ってきてー」という曲を思い出した。
ただそれだけ。

自転車

スピッツには壮大な名曲を生み出して欲しいと思う反面、中規模の名曲を生み出して欲しい、
という思いがあります。
例えば『猫になりたい』とか『恋のうた』、『うめぼし』なんかがそれにあたると思います。
派手さはないんだけど、中ぐらいのスケールでじんわり漂う曲のよさっていうのが
なーんかスピッツに似合っている気がして落ち着くんですよね。
この『自転車』はそんな中規模名曲集にエントリーしてもおかしくない、落ち着いてほのぼの聞ける曲です。

テイタム・オニール

『さわって・変わって』や『メモリーズ』ではクジヒロコさんのキーボードが生かされた新しい
スピッツが表現されていましたが、この曲でもキーボード(なのか?)が生かされており
おもしろい曲に仕上がっていると思います。
特にサビの部分は今までに無いスピッツらしくない感じだなあ、と思いました。
やはり、今回のアルバムでは、今までありそうでなかった新しいスピッツの音
というのが
あふれているようでうれしく思います。