ヒゲ山衝撃の告白「肛門が痛いの、肛門が」

私はこの夏、人生で初めてと言っていいぐらい、激しく肛門を痛めつけてしまいました。
だからといって、何か太くて硬いものを出したために肛門を切ってしまったとか
何か太くて硬いものを入れたために肛門を切ってしまったというわけではありません。
一言で言ってしまうとやけどをしてしまったのです。
あのデリケートな秘部に熱湯をドピュッとかけてしまったのです。
はたしてそんなことが起こりうるのでしょうか。
私も実際にやけどを負うまで、まさか肛門に熱湯をかける時が来ようとは思いもしませんでした。




事の始まりは夏休み中、実家の仙台に戻ってトイレに入っていたときのことです。
トイレ内で大仕事を終えた私は、ほっと一息ついて、「さあウオッシュレットで尻でも洗うか」と思い
「おしり」と書かれたボタンをぽちっとな、と押したわけです。
すると、どういうわけでしょう。
「汚れちまった俺をそのやわらかな水流で洗い流しておくれよ」
といった具合にゆったりと待ち構えていた肛門につきつけられたのは厳しい現実。
推定体感温度60度以上もの熱湯でした。



皆さん、想像してみてください。自分の体のデリケートな部分に60度以上ものお湯をかけられた時の衝撃を。
想像できないならば、人目につかないようにこっそりと実際に試してみるとよいでしょう。
それはもう、人が予測できる範囲をはるかに超えた衝撃であるため、心と肛門にトラウマとして
死ぬまでその傷跡を残すことでしょう。



しかも、熱湯が出るとわかっていれば覚悟のしようもあったかもしれませんが、私の肛門は
ようやく一仕事を終えたばかりで、緊張感から解き放たれた直後のため、脱力しきった状態だったのです。
そんなときに熱湯などをかけられてごらんなさい。
私は一瞬何が起こったのか判断できず、頭の中は「?!?!?!?!?!?!?!?!」
といった具合に大パニックに陥っていました。



しかし、頭がついてこなくても体は反射的に反応するようで、私は尻に刺激を受けると同時に
「うひょえっ!」と助けを求める悲鳴のような声、あるいは突然の出来事に驚嘆しているような
不可思議な声を発し、さらに体はびっくり箱の仕掛けのようにぴょーんと斜め上に跳ね上がったのです。



意識の及ばないところで跳ね上がった体はトイレのドアにしたたかに打ちつけ、にぶい音をたて、
一方ウオッシュレットのお湯は未だにピュピューと勢いよく出っ放しのため、一体何から
はじめればいいものかと、私はトイレで一人、じたばたじたばたと大パニックです。
あたりは水浸し。私おろおろ、尻ヒリヒリ。
昼下がりの穏やかなひとときがウオッシュレットの少量のお湯により、一瞬にして大惨事へと
変貌を遂げてしてしまいました。



私がトイレのなかで一人そのような大惨事を迎えていたころ、異変を感じ取った母がドアの外から一言
「あー、なんかねー、トイレのお尻洗うとこ、最近壊れちゃったみたいだから気をつけてねー
一旦コンセントを抜いてもう一度差し込むと元に戻るよー」
とのんきな声でアドバイスを送ってきました。


「うおお…、そういう重要なことはトイレに入る前に伝えておくれよ母さんよ…」
私は激しい痛みのため強く言い返すことができず、そう心に思い浮かべるのみでした。
ようやくパニックがおさまった後、心身共にぐったりとした私は、便座に腰掛けて、なんとなく
おぼっちゃまくんについて思いを寄せていました。




最初に思い浮かべたのは「『ぜっこーもん』の痛みと肛門に熱湯をかけた場合の痛みではどちらが苦しいのか」
というテーマについてだったと思います。
要するに肛門の痛みつながりで、小林よしのりが月刊コロコロで連載していた漫画『おぼっちゃまくん
に出てくる「ぜっこーもん」という茶魔語を思い出したのです。



私の記憶が確かならば、ぜっこーもんという技は繰り出す相手に対して、
「お前なんかとは絶交だ」という意思表示を表すためのものでもあるので、これを受けた相手は
尻の痛みと共に心の痛みも伴うことになるのでしょう。
よって、私のこの時感じた痛みと同列に並べて比較するというのはふさわしくないだろう、
という結論に達し、私は一人「うむうむ」と納得し、肛門の具合を確かめるために、そっと尻を撫でてみました。



それから、次に私が思いを寄せたのは「いいなけつ」についです。これも茶魔語のひとつで、
いいなづけの相手に対して約束を確かめ合うために、親しみを込めて尻と尻をすり合わせるという
行為だったと記憶しています。
このいいなけつ、実は我々の身近なところでも皆、無意識のうちに行われているのではないか、
と私は仮説を立ててみたのです。



間接キスという言葉があります。他人が口をつけたストロー、ペットボトルの口、水道の蛇口、たてぶえ
などに別の人間が再び口をつける行為を指すと思われますが、間接キスという言葉を認めるならば
間接いいなけつという言葉を認めたとしてもいいのではないか、と私は思うわけです。



つまり洋式トイレの場合、特に公共の場所にあるものは不特定多数の人間が尻をこすり付けあうわけですから
他人が尻をこすりつけた便座に再び別の人間が尻をこすりつける、という行為、
これはもはや立派な「間接いいなけつ」といってもよいのではないでしょうか。
たまに誰が座ったのかわからない便座に座るのは嫌だといって、洋式トイレを用いるのを拒む
人がいますが、なるほど、そういういう人たちは無意識の内に間接いいなけつを行うことを
拒んでいたのですね。確かに見ず知らずの人と、いいなづけであることを確かめ合う行為である
「いいなけつ」をするというのは明らかに異常なことですよね。



このような結論に達した私は一人トイレで「なるほどなるほど」と納得すると、ようやく痛みが
おさまってきた肛門付近を再びそっと優しく撫でたのです。




この時ヒゲ山24歳。蒸し暑い夏の日のことでありました。