パラッパラップ音(前編)

カタカタカタカタ・・・
と突然,部屋のどこかで控えめな音が鳴り出したので,地震が発生して何かが揺れているのかなあと思い,ぼんやりとネットで地震速報をチェックしてみたのですが,地震が起きたという情報はどこにもありませんでした。
おっかしいなあーと思いつつ,次に考えたのは,隣の部屋の住人が貧乏ゆすりをしているため,その振動が私の部屋まで伝わってきて,部屋の何かがカタカタと音を立てているのではないか,という可能性についてです。
しかし,5分間とぎれることなく均一な音を部屋に鳴り響かせるほどの貧乏ゆすりはあり得るのだろうかと疑問を感じたため,そもそもの音の発生源はどこだろうか,何が揺れているのだろうかということが気になり,注意深く部屋を調べてみたのです。
その結果,どうやら音はベッドの上の,本来音が発生するはずのない空間から鳴っているらしいということが判明したため,急激に怖くなってきました。
一方で,5分ほどもカタカタ鳴り続ける音が鬱陶しくなってきたので,とりあえず,
「うるさいっ!」
と音が発生している空間のあたりに叱りつけてみたのですが,音は鳴り続けたままです。


ううむ,相手は人外の者。これは,真正面から攻め込んでいくのではなく,意表を付く対応で音を鳴りやませなければなるまい,
と考えた私は,
椅子から立ち上がり,音が発生していると思われる空間に両手の人差し指を向けて,すこぶる爽やかに,
“せ〜の!ドピュッ!!”
と声をかけたところ,
なんということでしょう。
それまでの音が嘘のように,ピタッと鳴り止んだのです!


まさか,このような対応で本当に鳴りやむとは思っていなかったので,非常に焦りを感じた私は,固まった姿勢のままベッドの上の空間をにらみつけていたのですが,1分ほど経過すると再度
カタカタカタカタ・・・
と音が鳴り出しました。
そこで,今度は,聞こえるか聞こえないかという声で,慎重に
“せ・・の・・・どぴゅ・・・”
と囁いたところ,やはり今度もピタッと鳴り止むではありませんか。
“どぴゅ”をきっかけに音が鳴り止むラップ音の話は聞いたことがなかったので,ネットで「ラップ音 ドピュ」で検索してみたのですが,案の定有益な情報は得られませんでした。

そんなことを調べていると,それ以上音が再発することもなかったため,
まー,考えすぎてもわからないものはわからないのだから,とりあえず寝よう!
わからないならわからないで,ブログのネタになるかもしれないからね!
と結論づけ,ベッドの上に,ごろんと寝ころび,すぐに眠りにつきました。
先ほどまで音が鳴り響いていたベッドの上に,です。
その数時間後の明け方に目を覚まして本当の恐怖を体験することになるとは,このときはまだ知るよしもなかった・・・。
(続く)