夢と現実の狭間で初めて金縛りを体験しちゃった。

まずは,死体を発見したんですよ。


「げげーっ」と驚いていると,どこからか「コツーン,コツーン」と足音が近づいてきたので,「あわわわわー」とオロオロして辺りを見渡すとシーツのような毛布のような,とにかく隠れるのにちょうど良い布状の物体が目に入ったんです。
これ幸いとばかりに,急いでそれにくるまって身を潜め,足音が通り過ぎるのを待とうとしたのですが,足音が私のちょうど前で止まり,数秒の間があった後に,がばーっ!とめくり上げ・・・


というところで夢から覚めたのですが,目が覚めた後もどうもおかしいのです。
何者かが私の布団をバサーっと剥いだり元に戻したり,というのを一定のテンポで繰り返しているような感覚がしたので,「なんぞー!」と思って,慌てて寝ぼけまなこで見てみると,半透明のようなうっすら発光しているような,ぼんやりとした人型の輪郭が私の右ななめ横に存在しているのを感知したのです。
私が目を見開いてその人型の輪郭をした存在をじっと見つめて状況を把握しようとしている間も,「それ」は布団を剥いだり戻したり,という動きを続けているので,だんだんと鬱陶しく感じ,
「おいっ!!」
と怒鳴りつけようとしたのですが,あれ,まてよ,と。


自分は自宅に寝ていたと思っているけれど,たった今,怖い夢から覚めた後で,現在はいわば半覚醒状態のようであり,どこに寝ているかの判断も定かでないから,もしかすると自宅で寝ていると思いこんでいるだけで,実際は,職場の当直室で寝ているのかもしれないし,実家に帰っているのかもしれないし,入院中の病室のベッドにいるのかもしれない。
もし,本当は当直室や実家や病室で寝ているのであれば,周りにいる人の迷惑になってしまうから怒鳴りづらいなあ,と判断したのです。
そこで,とりあえずは手で布団を掴んでめくり上げられないようにしなければ,と考えたのですが,いくら力を入れても体が動かないのです。


おおっ・・・もしや,これが俗に言う金縛りというやつではないか・・・?
そう思って,最初は驚き焦っていたのですが,次第に「こんなに力を込めているのに,体が動かない感覚って,初めてで,なんか怖オモロー!」という気持ちになってきて,不思議な状況を楽しんでいると,それと共に半覚醒状態から徐々に脳がすっきりしていく感じがして,気が付くと,人型の輪郭をした存在も消えていました。


「あららー,一体何だったんだろう」と思って,もう一度体を動かしてみると,最初はうまく反応しなかったのですが,旧式のロボットが「ギギギギ・・・」とさび付いた音を立てて動くような感じで,脳から筋肉に対する「動け」という命令に体全体がじんわりと反応しはじめ,ようやく元通りに動かせるようになりました。
枕元の時計を見ると午前6時になろうかというところでした。


これまでに,「夢から覚めたと思ったら,実は覚めた後の現実だと思っていた世界もまた夢だった」という二重トラップが仕掛けられた夢を数回体験したことがあったので,今回もそのパターンのやつで,金縛りの一連の流れも夢から覚めた後の夢だったでは・・・という可能性も考えてみたのですが,どうも過去に体験したことのある二重トラップの夢の感覚とは違うので,その可能性はすぐに却下しました。
おそらくは,夢に近いかもしれないけど,夢ではない,けれど,現実の感覚とも違う半覚醒状態だったから体験できたことだったのかなあと,なんとなく結論付けることにしました。


それと,今,あらためて振り返ってみて気づいたのですが,夢から覚めて「おいっ!!」と怒鳴ろうとしたときに「自宅のベッドではなく入院中の病室のベッドにいるのかもしれない」と考えたところが地味に怖くないですか。
ここ十年以上,大きな怪我や病気をせず,入院した経験もないというのに,どうして,「病室かもしれない」と考えたのか。そのときはかなり真実味のある可能性の一つだと考えていたのが,実は不思議でじわじわ怖かったりする。


ついでに言うと,金縛りにあった日の夜,風呂に入ろうとして服を脱いだときに,全く身に覚えのない,うっすら赤いあざ(大人の手の大きさくらいのもの)が左腕に付いていることに気がつき,触ってみると打撲したような軽い痛みを感じたのが謎で,ちょっと怖い気がするのですが,深く考えるとややこしいので,これはあまり気にしないことにしましたよ(あざも痛みも一晩寝たら消えました)。