ドッペルゲンガーBOKO

試験が無事終了し、クラスで飲み会がありました。
集合場所に早めに着いた私は、飲み会が始まる前に用を足しておこうと思い、近くの
ゲームセンターのトイレに入ったら、本日の飲み会に参加する顔見知り程度の仲の
クラスメイトに出会いました。
しかし、彼とはたいして仲が良いわけではなかったので
「あ・・」
「ども・・」
程度のおざなりなあいさつで少々気まずくなってしまうのも仕方のないことでした。



彼との関係性に一度目の転機が訪れたのは、その1時間半後です。
飲み会で大量の酒をかっくらった私は、頃合いを見計らって店のトイレに行ったのですが、
なんとそこでも先ほどのゲーセンで出会ったクラスメイトと遭遇してしまったのです。
「あ・・」
「ども・・。・・なんか尿意の周期が一緒なんですかね」
「そうみたいですね、ふふふ」



「尿意の周期が一緒」
たったそれだけのことで、妙な親近感を感じた二人の距離は、このとき一気に縮まった!
・・・かのように思えたのです。
しかし、それも長くは続きませんでした。



二度目の転機が訪れたのは、その二時間後です。
締めの乾杯が終わり、店からぞろぞろと飲み会メンバーが出て行くときに、私は再び
店のトイレに向かったのです。
まさかな・・・と思いつつ、なにげなく小便器で用を足している男の横顔を見ると・・・


いた!!


相手もぎょっとした様子でこちらを見て
「あ・・」
「ども・・」
そんなデジャヴのようなあいさつを交わすしか、我々にはもはやなす術がありませんでした。
さすがに三度目ともなると、気味が悪くなってくるものであります。
少なくとも私は二度目までは笑って済ませられたけれど、このときばかりは
(お・・・お前、俺の膀胱をパクるなよ!)
とちょっと思いました。
しかし、たいして親しい相手ではなかったので、口には出さず愛想笑いで
すませるしかありません。


二度目までは、あんなにも親しみを感じた相手だったのに、三度目ではそれが嘘のように
以前の距離感に元通りに。
いや、お互いの顔を見るたびに、「尿意の周期が一緒の人(略して尿の人)」というイメージで見てしまう
ぶん以前よりもたちが悪いでしょう。
二度か、三度か。
たった一度の尿意違いでこんなにも異なる結果をもたらすとは驚きですが、
しかし、よくよく考えると人生というのは、ほんのちょっとの差で大きな異なる結果が現れる、
そんなものですよねえ。しみじみ。