ワンダークラクション〈前編〉

車に乗っているとといつも思うことがある。
どのような車にも等しくついているクラクションという機能、あれはどうにかならないものだろうか。


電話の着信音でさえ昔の黒電話の「ジリリリン」というけたたましい音から、耳に優しい電子音が登場しては
16和音だとか32和音だとか音が徐々に豊かになっているというのに。
時代が進むにつれ着うただとか着ボイスとかいうものも出てきているというのに。


それなのにクラクションだ。未だに「ブッブー」とかいう時代遅れで相手を威嚇することしか能のない単音だ。
上から目線な音の感じも許せない。自転車のベルが「チリンチリン」という「ちょっとおどきなさいよ」的な
イメージだとするとクラクションにはどれも同様に「オラオラ、どきやがれ!」と騒ぎ立てる品のないイメージがある。
これだと突然お年寄りに向かって大音量で鳴らしたら、心臓に負担をかけさせてしまうのでは、と心配になり
迂闊に鳴らせないではないか。


おい!21世紀に「ブッブー」って!おい、車!外装だとか内装だとかエンジンだとかカーナビだとかを進化させる前に
まずクラクションを進化させようよ。
そうだ、これからは個性の時代なのでクラクションにも個性をもたせるべきであろう。
例えば着ボイスに対抗してクラクションボイスでどうだろう。
昇竜拳昇竜拳!」(猫ひろしの声で)とか「感動した!」(小泉純一郎の声で)とか
「あーあ、死ねばいいのに」(ホリの金八声で)とかだったら、自己の運転する車の存在をユニークに
知らしめることができる。
ただ人間の声を用いると車であることをすぐには気づかれないかも、という心配もあるので、
その時は動物の声でもいいじゃないか。
「パオーン」とか(象)「ピー」とか(ピー助)でいいじゃないか。
自由にクラクションを選べられるようにすれば、運転手によって個性を持たせることもできるし、
1台の車でもクラクションを鳴らす相手や状況に応じて、その場で数種類のクラクションを使い分わける
ことが可能になればよりクラクション表現に幅を持たせることが出来る。
例えば道を譲ってくれた車に対しては「感動した!」を鳴らし、チャリで集団下校している高校生が
車道にはみ出してきたら「昇竜拳!」を用い、方向指示器を出さずに割り込んできた車に対しては
「あーあ、死ねばいいのに」を鳴らせば効果てきめんである。
しかし、現実にはそのようなクラクションは無いのだ。(ないですよね?たぶん)
そして私は平凡で威圧的なクラクションが嫌いなのだ。
そんなわけでこれまでクラクションを鳴らすことは無かったし今後も鳴らすことはないだろうと思っていた、
のだけれど。