星を継ぐもの

①ホク子目覚めの時


初めて自分の力を自覚したのは高校2年生のときだった。
いつものように家から少し離れた女子高に通うため、満員電車に揺られていた私は、電車が急ブレーキをかけたためにバランスを崩し、すぐ前に立っていたM高の男子生徒と思われる男のこめかみを、指で軽くつついてしまったのだ。


つついたといっても、ちょこんと触れただけなので、相手にしてみれば「ん?」と思った程度かもしれない。
しかし、実際の手ごたえとはまた違った別の意味をもつ感触を、この時私は確かに感じとったのだ。
そのため、「えらいことをしでかしてしまった」と激しく焦って、無駄だとは思いつつも男に謝罪した。


「ああーっ!ご、ごめんなさい!」
しかし、相手のM高生徒はきょとんとした顔で
「へ?ちょっとぶつかっただけなんだからそんなにあやまらなくてもいいよ」
と答えた。
「違うんです。私、よろめいた拍子に偶然あなたの秘孔をついてしまったんです。」
「え…?それってどういう意味なんですか?」
「つまりね、あなたはすでに死んでいるのよ!」
「は?いきなり何を言い出す・・・あ、あ、、あべしー!」


断末魔の雄たけびを上げると、彼の頭部はねずみ花火の最後のように「パン!」と音を立てて肉片が飛び散った。
返り血をたっぷり浴びた私は周囲がざわつく中、電車が駅につくやいなや全力で逃げ出した。




私がこのような力を持っているのは、我が家が代々北斗神拳の使い手だからである。
私の父には継承者にふさわしい才能が全くなかったらしく、そのせいか代わりに祖父は継承者として私を幼いころから鍛えてきた。
「お前には才能がある」と祖父はことあるごとに言うのだが、私は普通の女子高生として生きていきたかったので、祖父の言う言葉を無視し続け、修行も何かと理由をつけてサボってきた。
そのせいかさまざまな北斗神拳の技を叩き込まれても、何一つとして秘孔をつくことはできなかった。
それが今日になって、突然、できるようになるとは。
何も今日でなくても、と思うのだが。


この日のできごとは瞬く間に人々の間に伝わった。
そのため、私が電車で揺られるたびに周囲の人々は恐れおののき、どんなに満員でも周りは常に半径3メートル以内に人が寄り付かなかった。
私の右手は「ホク子の拳」と呼ばれ、半ば伝説となった。 



②ホク子悲しみの時

 (たぶん来年に続く)